夏の田舎で壊れていく関係――純愛と執着が絡み合う、夏の再選択セックス！！

本作最大の魅力は、「ただの背徳もの」では終わらない、感情の重さと関係性の歪みが丁寧に積み重ねられている点にあります。

夏の田舎という逃げ場のない舞台で、選ばれなかった少女の想いが少しずつ形を変え、読者の胸に重くのしかかってきます。

欲望と未練と依存が静かに絡み合い、気付いたときにはページをめくる手が止まらなくなる、そんな没入感が強烈に描かれています。

本作で描かれる葵の魅力は、最初から強く主張するタイプではない点にあります。

控えめで、相手を思いやる姿勢を崩さないまま、それでも心の奥では強烈な独占欲を抱えている。

その感情が少しずつ言葉や態度に滲み出てくる過程が非常にリアルで、読者は否応なく彼女の心情に引き込まれていきます。

「可愛い」だけでは終わらない、危うさを孕んだ妹ヒロイン像が強く印象に残る構成です。

舞台となる田舎の夏は、開放的でありながら不思議な閉塞感を同時に感じさせます。

逃げ場のない距離感、昔から続く関係性、そして変わらない風景。

そのすべてが、登場人物たちの感情を増幅させ、選択を誤らせていく要因として機能しています。

ただの背景ではなく、物語を動かす“空気”として夏の田舎が描かれている点は、本作ならではの大きな魅力です。

『夏のヤリなおし』シリーズを追ってきた読者ほど、本作の重みはより深く刺さります。

過去作で積み上げられてきた人間関係や選択の延長線上に、今作の展開がしっかりと位置付けられているからです。

単発作品としても楽しめますが、シリーズを通して読むことで、登場人物たちの行動に対する理解と共感が一層強まります。

感情の積み重ねがあるからこそ生まれる、この濃密さは必見です。