『オクトパストラベラー』シリーズが歩んできた独自の進化。その流れの中でも、今回の『オクトパストラベラー0』は、特に注目される作品になりそうだ。2025年12月4日に発売が予定されており、対応プラットフォームも非常に幅広い。Nintendo Switchと次世代機であるNintendo Switch 2、さらにPS5やPS4、Xbox Series X|S、そしてPC(Steam / Windows)にも対応している。これだけ多くの環境で展開されるということは、ユーザー層の広がりを意識した開発体制が整っているという証でもある。

シリーズを支えてきた「HD-2D」の美しいグラフィックや戦略的なバトルシステムをベースにしつつも、今回の『0』ではその核となる部分が大きく再構築されている。過去作の流れを引き継ぐ形でのスピンオフではなく、コンソール向けに完全に再設計された“新作”として発表されており、スマートフォンで人気を博した『オクトパストラベラー 大陸の覇者』で培われたノウハウが、今回の作品にも活かされている点は見逃せない。
開発を担当しているのは、スクウェア・エニックスとDOKIDOKI GROOVE WORKSの共同チーム。これまでのシリーズでは、8人の個性豊かなキャラクターたちが交錯する群像劇スタイルが特徴だったが、今回は「プレイヤー自身が主人公となる」ことが最大のテーマとして掲げられている。その意味でも、この『0』はシリーズの起点であると同時に、“プレイヤーによる物語の創造”を本気で掲げた、意欲的な作品になっているのが伝わってくる。
主人公は「あなた自身」|キャラクリによって始まる“自分だけの物語”
今回の『オクトパストラベラー0』で最も大きな変化、それは“物語の主役”がプレイヤー自身になるという点だ。これまでのシリーズでは、あらかじめ設定された主人公たちの人生やドラマを追体験することが中心だったけれど、本作ではそのスタンスが根底から覆されている。プレイヤーは最初に、自分だけのキャラクターを一から作り上げるところから物語が始まっていく。

キャラクリエイトの自由度もかなり高く、外見や声、モーションはもちろんのこと、「好物」や仕草といった細かい個性まで設定できるようになっている。RPGとしての没入感を高めるうえで、こうしたパーソナライズの要素は非常に重要で、開発陣もこの自由度に相当なこだわりを注いでいることがうかがえる。
プレイヤーが創り上げた主人公は、故郷を焼き払われ、すべてを失ったという過去を背負って旅に出ることになる。その旅の目的はただ一つ、奪われた故郷を自らの手で取り戻すこと。誰かの物語を追うのではなく、自分の手で“人生”を選び、“復讐と復興”の道を歩んでいく。そんな物語構造が、本作を単なるRPG以上の体験に変えてくれる。
また、ストーリーの進行によって、プレイヤーが選んだ言動や仲間との関係性によって街の再建具合や出会う人々にも変化が生まれていく設計になっている。このあたりの演出も、物語の“唯一無二感”を高める要素として非常に機能しているように感じる。
プレイヤーが「誰かになりきる」のではなく、「自分自身の旅」を紡いでいく――それこそが『オクトパストラベラー0』が打ち出す最大の革新と言っていい。
バトルはさらに深化|8人編成・必殺技・セレクトアビリティで広がる戦略性
『オクトパストラベラー0』が打ち出しているのは、単にビジュアルや物語構造だけではなく、戦闘面での革新もまた大きなポイントとして際立っている。これまでのシリーズでも高く評価されてきた「戦略的なコマンドバトル」は、本作でさらに磨きがかけられている印象を受ける。

まず、本作のバトルは最大8人によるパーティ編成が可能で、前衛・後衛というポジショニングの概念が明確に導入されている。それぞれの役割やタイミングを考えながら入れ替えて戦うことで、戦術の奥行きがぐっと広がる。特に、キャラごとに異なるスキル構成を活かして戦況をコントロールしていく楽しさは、シリーズファンにとっても新鮮な手応えになるはずだ。
そして新要素として注目したいのが、“ここぞ”という局面で使えるキャラクター固有の「必殺技」の存在。これが加わったことで、戦いの中に明確なクライマックスが生まれるようになっていて、プレイヤーの判断ひとつで逆転のチャンスを生み出すスリルが体験できるようになっている。
また、キャラクター育成にも新しい風が吹き込まれている。「セレクトアビリティ」という新システムによって、手に入れたアビリティをまるで装備品のように自由に付け替えることができる。これによって、同じキャラでもプレイヤーごとにまったく異なる役割を持たせることが可能になり、バトルの組み立て方にも強い個性が出てくる。
こうして見ると、『オクトパストラベラー0』の戦闘は、単に「強い技を使って勝つ」だけでは完結しない。キャラ同士の組み合わせ、配置、タイミング、育成方針……それらすべてを絡めた“戦略の総合力”が問われる設計になっている。RPGにおけるバトルの魅力を改めて深掘りしようとする姿勢が、随所から感じ取れる。
冒険の成果が“形”になる街づくりシステム|故郷を復興し、世界を変える
『オクトパストラベラー0』を語るうえで、忘れてはならないのが新たに導入された「街づくり」システムだ。単なる拠点機能にとどまらず、ストーリーそのものと深く結びついているのが最大の特徴と言える。なぜなら、プレイヤーが演じる主人公の旅の目的そのものが「故郷の復興」だからだ。

序盤で失われた故郷を再び取り戻すという大きな目的を掲げ、プレイヤーは仲間とともに世界を巡っていく。その過程で得た資源や人材を活用して、グリッド状に構成された土地に建物を配置しながら街を発展させていくことになる。この過程自体が“物語の一部”として組み込まれているため、街の発展が単なる作業に見えないところが、本作の巧妙な演出のひとつなんだと思う。
特に印象的なのが、冒険の進行とともに変化していく街の景観や人々の反応だ。たとえば、あるキャラクターを仲間にしたことで開放される施設があったり、イベントの進行によって街に新たな悩みや課題が発生したりと、成長の実感が画面上にしっかりと反映されるようになっている。こうした細かい変化の積み重ねが、プレイヤーの行動に対する手応えにつながっているのは間違いない。
そしてもうひとつ。この「街づくり」は、バトルやキャラクター育成と密接にリンクしているという点でも注目しておきたい。街の施設の充実度や配置によって得られる恩恵が変わってくるため、「どの順番で、どの施設を整えるか」といった戦略性も問われてくる。これはまさに“冒険の成果がプレイヤーの手で可視化される”体験と言える。
つまり、戦って、仲間を増やして、資源を集めて、街をつくる。その一連の流れが物語ともゲームプレイとも見事に連動していることで、本作は従来のRPGにはなかった長期的な目的意識と、プレイ継続のモチベーションをしっかりと支えてくれている。これがあるからこそ、物語のゴールが“画面の中に確かに存在するもの”としてプレイヤーの前に立ち現れる。
前日譚ではなく“完全新作”|開発チームの狙いとメディアの評価とは
タイトルに“0”というナンバリングが付いていることから、物語の始まりや前日譚をイメージした人も多いかもしれない。ただ、実際には『オクトパストラベラー0』は過去作の補完やプロローグではなく、“コンソール向けに再構築された完全新作”として位置づけられている。これは単なるスピンオフではなく、RPG体験そのものを再定義しようとする大きな挑戦でもある。

その挑戦の中心にいるのが、スマートフォン向けRPG『オクトパストラベラー 大陸の覇者』を手がけた開発チームだ。彼らは、モバイルで得た知見やプレイヤーデータをもとに、据え置き機ならではの演出やボリューム感に最適化されたゲーム体験を生み出そうとしている。その流れの中で、“プレイヤーが主人公になる”という大転換が生まれたわけだ。
この方針については、ゲームメディア各社からも強い関心が寄せられている。IGNやファミ通をはじめとする複数のメディアが、本作のコンセプトを「シリーズの本質を守りながら革新を試みた意欲作」として紹介しており、キャラクリや街づくりといった新要素に対しても好意的な反応が見られている。
一方で、一部のメディアからは「従来のシリーズにあった、固定キャラクターたちが織りなす濃密な人間ドラマが失われてしまうのではないか」という懸念も上がっている。確かに、明確な個性を持った主人公たちが絡み合う群像劇こそがシリーズの魅力のひとつだったことは間違いない。しかし、本作はそのスタイルを捨てることで、逆に“プレイヤーの個性”が物語に直接反映される構造を成立させている。そう考えると、これは単なる形式変更ではなく、物語体験そのもののアップデートと呼べるものなのかもしれない。
つまり、“0”というナンバーに込められた意味は、過去への回帰ではなく、まったく新しいスタート地点の提示だということ。それは、開発陣が今後の『オクトパストラベラー』というブランドをどう進化させていくのか、その方向性を強く示しているように感じられる。
コレクターズエディションと予約特典の詳細|入手するなら今がチャンス
ここまで『オクトパストラベラー0』の世界観やシステム面の進化について触れてきたけれど、いよいよ発売を控える中で気になるのが、各種エディションと特典情報だ。今回もシリーズらしく、コアファンを満足させるためのアイテムがしっかり用意されている。
まず、通常版とは別に、スクウェア・エニックスe-STORE限定で用意されているのが「コレクターズエディション」だ。こちらにはゲームソフトに加え、世界観を掘り下げられる設定資料やビジュアルブック、さらには実物仕様の指輪やサウンドトラックなどが同梱される。いずれも『オクトパストラベラー0』という作品をより深く楽しむための特別なコレクションとなっている。

加えて、パッケージ版の初回生産分には「旅立ち応援パック」と呼ばれるアイテムセットが封入されており、ゲーム序盤の攻略を支える便利な装備や回復アイテムなどが手に入るようになっている。さらに、早期予約者向けには「セレクトアビリティ 氷結魔法の極意」など、戦術的にも使える特殊なアビリティが付属する。こういった要素はプレイ体験そのものに直結する部分なので、特典重視で購入を考えている人は早めのチェックが推奨される。
数量限定の特典が多いこともあり、発売日が近づくほど入手難易度が上がることも予想される。せっかくなら最高の形でこの“新たな旅”に出発したいところだし、情報が出揃ってきた今こそが、まさにその準備を整えるタイミングだと思う。
ここまで見てきたように、『オクトパストラベラー0』は、単なる続編という枠を超えた“新しいRPG体験”を提案する挑戦的な作品に仕上がっている。HD-2Dの美しさはそのままに、キャラクリエイトや街づくりを通じてプレイヤーの個性と選択が物語を形づくっていく構造は、これまでのシリーズとは一線を画す魅力を放っている。
従来のファンも、これが初めての『オクトパストラベラー』になる人も、自分だけの旅を始める準備はできているだろうか。もし少しでも心が動いたなら、その一歩を踏み出す価値はきっとある。次にこの世界を歩くのは、あなた自身だ。