『妻にモザイク3』夫視点で描かれる“ホラー映画”のような寝取られ劇

『妻にモザイク3』は、これまでの物語に幕を下ろすシリーズ完結編です。前作までに積み重ねられた出来事や関係性が、ひとつの結末へと収束していく構成は、読み進めるほどに緊張感を増していきます。

物語の中心にあるのは、借金返済のために知人と寝取られ動画の撮影に臨む妻の姿。そして、それをただ見届けるしかない夫の視点から描かれることが、この作品に独特の臨場感と重苦しい空気を与えています。愛する存在の変化を否応なく突きつけられる感覚は、ページをめくるたびに胸を締め付けてきます。

完結編らしく、冒頭から物語は終末に向かって一直線に進みます。一見何気ないやりとりや情景描写も、最終的には結末へと繋がる伏線として機能しており、読者は息をつく暇もなく引き込まれていきます。その過程で描かれる夫の葛藤や心情の揺れは、単なるジャンル的魅力を超え、人間関係の崩壊を目の当たりにするような生々しさを伴っています。

そして迎えるラストは、喜びや救いとは無縁のもの。むしろ深い喪失感と余韻だけが残り、物語を読み終えた後も長く頭から離れません。