同人コミック『失恋鹿島の夏休み 番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜』は、サークル「CHIBIKKO KINGDOM」より発行された最新作で、作者はけこちゃ先生です。ページ数は全43枚で構成されており、表紙やイラストのほか、本編漫画は38枚と読み応えのあるボリュームになっています。

失恋鹿島の夏休み番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜

今作は、人気シリーズ「失恋鹿島の夏休み」の番外編に位置づけられており、コミケ106(2025年夏)で発表された注目の新刊でもあります。

ジャンルとしては、年上女性の包容力や水着姿をはじめとした夏らしいシチュエーションに加えて、ショタ要素や癒しの雰囲気が融合しているのが特徴です。お姉ちゃん的存在のヒロイン・鹿島が、少し大人びた視点から少年を優しく導く構図は、この作品ならではの魅力と言えます。読者は甘く切ない心情描写と、背徳感を漂わせる関係性の両面を同時に楽しめるでしょう。

作品全体に流れる空気感は、ただの成人向け作品に留まらず、夏休みという特別な時間の中でしか生まれない淡い感情や成長を描いている点にも注目したいところです。少年の不安や孤独に寄り添いながら、海という舞台を背景に紡がれる物語は、読者にとっても心に残る一冊となるはずです。

少年とお姉ちゃんの海辺の出会い

物語の舞台は、夏休みに訪れた海辺です。主人公の少年は、なんでもできる兄と自分を比べてしまい、両親が兄の隣で笑っている姿を目にして、まるで世界から置き去りにされたような気持ちに沈んでいました。そんな時に出会ったのが、年上のお姉さん・鹿島です。

失恋鹿島の夏休み番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜

「よかったら、お姉さんとお話しない?」と声をかけられた瞬間から、少年の孤独な夏は少しずつ色を取り戻していきます。海風に吹かれながら、同じように寂しさを抱えていた過去を知る鹿島は、彼に「ひとりじゃない」と優しく伝えます。その言葉と笑顔に、緊張で固まっていた少年の表情がほぐれ、やっと笑みを浮かべることができるのです。

その瞬間を見て「逆ナンパした甲斐があったかも」といたずらっぽく笑う鹿島。明るい水着姿に、少年は初めて経験するドキドキを覚え、胸の奥に熱が広がっていくのを止められなくなります。幼さの中に芽生える大人の感情と、戸惑いながらも心が惹かれていく感覚。その揺れ動きが、作品全体をより鮮やかにしているのです。

夏と海、そして大人の関係

この番外編の魅力は、やはり夏と海という舞台が持つ解放感と、そこに重なる大人の関係性の甘さと切なさにあります。青い海と白い砂浜、そこに立つ鹿島の水着姿は、明るさの中に大人の色気を漂わせていて、少年の視線を奪って離しません。その存在感は、単なるヒロインではなく、彼にとって「心の支え」と「初めて知る女性らしさ」を重ね合わせた特別な存在として描かれているのです。

失恋鹿島の夏休み番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜

鹿島は、年上ならではの包容力で少年の戸惑いを解きほぐしていきます。自分の弱さを誰にも言えなかった彼に寄り添いながら、「ひとりじゃない」と言葉にしてあげる姿は、まさに癒しそのものです。しかしその優しさは、単に温かいだけでなく、背徳感や大人の甘い誘惑へと自然につながっていきます。少年にとっては初めて触れる女性の柔らかさやぬくもりが、彼の心だけでなく体までも大きく揺さぶっていく展開へと進んでいくのです。

失恋鹿島の夏休み番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜

作品全体を通して、無邪気さと大人びた雰囲気が絶妙に交錯しており、読者は「青春の一場面」と「背徳的な体験」を同時に味わえる感覚を覚えます。夏のきらめきと海辺の開放感が、ふたりの関係をさらに特別なものへと引き上げていて、その一瞬の尊さがページをめくるごとに鮮やかに伝わってくるのです。

総評:癒しと背徳感が混じり合う夏の一冊

『失恋鹿島の夏休み 番外編』は、単なる番外編という枠を越えて、シリーズ全体の魅力を改めて提示してくれる一冊になっています。少年の孤独や劣等感に寄り添い、温かな言葉と笑顔で救い上げる鹿島の姿は、読者にとっても深い癒しを与えてくれます。その優しさは決して押し付けがましくなく、むしろ自然に心を解きほぐしてくれるような柔らかさがあり、読んでいる側までほっとさせられる瞬間が何度も訪れるのです。

失恋鹿島の夏休み番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜

しかし同時に、この作品が持つもう一つの顔である背徳感や大人の甘やかしが、ページを進めるごとに濃く浮かび上がってきます。無邪気さと初々しさの中に潜む新たな感情が、彼を確かに大人へと近づけていく。そんな過程を見守る読者は、癒しとドキドキを同時に味わうことになります。まさにタイトルが示す通り、切なくも甘い夏休みの物語がここには広がっているのです。

失恋鹿島の夏休み番外編〜お姉ちゃんと海が嫌いな僕の夏休み〜

シリーズのファンであれば、鹿島の新たな一面を楽しむことができますし、初めて触れる方にとっても、夏らしい舞台と感情の揺らぎがすぐに心を掴んでくれます。優しさと背徳感、そのどちらもが見事に調和したこの番外編は、暑い夏の夜にじっくりと読み返したくなるような特別な一冊だと感じました。