『逃げてもいいんだよ 完全版』150ページで描かれる過激すぎる輪●地獄

物語は父親の転勤によって、兄と妹の心音が田舎町へと引っ越すところから始まります。都会の自由な空気に慣れていた二人にとって、その土地は想像以上に閉鎖的で、そして治安も決して良いとは言えない環境でした。新しい学校へ通い始めた心音は、転校初日から「東京から来た」というだけで目を付けられてしまいます。周囲の女子生徒たちの嫉妬や敵意が一気に向けられ、容赦のないいじめの標的となるのです。

心音にとってそれは、少女としての尊厳を削られる最初のきっかけでした。普通ならば少しずつ学校に馴染んで友達を作っていくはずが、その可能性を奪われてしまい、笑顔や安心を取り戻すこともできないまま追い詰められていきます。その姿を間近で見ていた兄は、このままでは妹が壊れてしまうと直感し、まだ間に合ううちに東京へ戻る決断を下します。

祖父母の家での生活は、心音にとって束の間の安らぎを与えるものでした。穏やかな日常を少しずつ取り戻し、ようやく未来を考えられるようになっていた矢先に、新たな不穏な影が差し込んできます。それが兄のもとへ届いた一通のメッセージであり、この後に続く悲劇の引き金となっていくのです。

東京へ戻った兄妹は、祖父母の家で平穏を取り戻していました。心音も徐々に笑顔を見せるようになり、暗い記憶を忘れようとするかのように新しい日常に馴染んでいきます。ところが、ある日兄のもとへ届いた一本のメッセージが、再びすべてを引き裂くきっかけとなってしまいます。「動画売ってやる」――その短い一文が、兄の心に重くのしかかるのです。

恐怖と不安が入り混じる中で、兄は悩みに悩んだ末、妹を守るために動画を購入してしまいます。しかし、そこに映し出されていたのは想像を絶する残酷な現実でした。心音が少女としての尊厳を徹底的に踏みにじられ、集団によって弄ばれていく光景。その一つひとつが目を背けたくなるほど苛烈で、兄の中で後悔と怒り、そして無力感が渦巻いていきます。

映像の中で描かれていたのは、単なるいじめを超えた「人格の破壊」でした。強制的に言葉を吐かされ、羞恥の中で写真や動画に残される心音。その表情には恐怖だけでなく、逃げ場を失った絶望の色が濃く刻まれていました。兄が守りたかったはずの妹が、知らぬ間にここまで追い詰められていたという事実に気付いたとき、彼は深い絶望に囚われることになります。

本作の大きな特徴は、その徹底した描写の濃密さにあります。心音が巻き込まれる行為は一度や二度では終わらず、制服姿のまま辱めを受ける姿や、まだ幼さを残す処女としての純粋さを無残に踏みにじられる場面が数多く重ねられていきます。読者はその展開を追うたびに、胸を締め付けられるような感情に飲み込まれていくはずです。

さらに強烈なのが、兄に対して「妹を寝取られた」という事実を突き付ける仕掛けです。メッセージアプリを通じて送られる醜態の数々は、兄の心を抉るだけでなく、読み手にも強い衝撃を与えます。輪●や言葉責め、中出しに飲尿といった極端なプレイが畳みかけるように描かれ、少女としての尊厳を奪うだけでなく、人間そのものを道具として扱う非道さが突き付けられるのです。

150ページというボリュームは、単なるエロティシズムの域を超えた「精神的凌辱の物語」を成立させています。鬼畜でハードな描写を突き詰めたからこそ、心音が味わう屈辱の深さと、その背後にある絶望の重みが読者の心に強烈に焼き付くのです。そして、その全てを収録した「完全版」という形だからこそ、この作品は過去作を凌駕する圧倒的なインパクトを放っています。