【電車密室の罠】『人生初の痴●をしてみたら即捕まったけどなんやかんやそのまま本番までいけた話』徹底レビュー

日々の通勤電車に揺られながら、心の奥底に隠していた妄想を抱えるサラリーマン・乾木田。彼は痴●という背徳的な行為に強く惹かれながらも、これまではあくまで空想の中で楽しんでいただけでした。しかし、ある朝の満員電車で、まさに彼の性癖に突き刺さる制服姿の女子学生と出会ってしまいます。あまりに理想的なシチュエーションを前に、我慢し続けていた衝動を抑えきれなくなり、ついに“人生初の痴●”へと手を伸ばしてしまうのです。

作品の冒頭は、この一線を越える瞬間のドキドキ感と緊張感に満ちています。痴●モノというジャンルならではの高揚感が、細やかな心理描写とともに描かれており、読者は乾木田の視点に引き込まれていく感覚を覚えます。彼が感じる背徳のスリルと同時に、失敗すれば一瞬で破滅に繋がる危うさが物語全体の空気を濃厚にしているのです。

乾木田の痴●は最初こそ順調に進んでいたものの、安心したのも束の間、すぐ近くにいた乗客に腕を掴まれ、その場で取り押さえられてしまいます。現実の厳しさに直面した瞬間、彼はあっという間に交番へと連行され、取り調べを受ける立場へと追い込まれていくのです。

通常ならこの時点で物語が終わってもおかしくない流れなのに、本作はそこから一転して異様な展開を見せます。被害者であるはずの女子学生まで一緒に取り調べを受けることになり、しかも担当警察官が「調書を作成するために、実際にどんなふうに痴●していたのかを再現してください」と、とんでもない指示を出してくるのです。この瞬間、読者は「そんな展開あり得るのか」と驚きつつも、作品世界に一気に引き込まれてしまいます。

交番という密室の舞台で、制服女子と乾木田の関係は新たな局面を迎えます。ここまでに積み上げられてきた緊張感が、一気に別方向の興奮へと変化していく様子が見事で、物語が単なる痴●モノの枠を超えて一種の“異常なリアリティ”を持ちはじめるのです。

この作品の魅力を語るうえで外せないのが、痴●モノにおける王道要素をしっかり押さえつつ、新鮮な展開を加えている点です。制服姿の女子学生という鉄板のキャラクター、満員電車という緊迫感に満ちた舞台、さらに交番での取り調べという想定外の密室劇が組み合わさり、読者を一気に作品世界へと引き込みます。

ページをめくるごとに、定番の背徳的なシチュエーションと予想外の展開が交互に押し寄せてきて、読み手は飽きることなく最後まで夢中になれる構成になっています。制服、電車、野外露出、そして密室といった要素が連鎖的に盛り込まれており、それぞれが単体でも魅力的なのに、物語全体として絡み合うことでより強烈なインパクトを生み出しているのです。

しかも単に過激さを追求するだけでなく、乾木田の心情や行動の揺れを細かく描くことで、ストーリーに厚みが増しています。読者は単なるシチュエーション消費ではなく、一人の男が妄想から現実へと踏み出し、予想を超えた経験をしていく過程を追体験する感覚を味わえるのです。そこに“王道と新鮮さの融合”という、この作品ならではの個性が光っています。