SNSが結んだ絶望の男女…『どうせ死ぬから、好きにして』で描かれる究極のわからせ純愛劇

「どうせ死ぬから、好きにして」は、一見すると重苦しく、自殺志願者という設定から物語は始まります。SNSを通じて知り合った木坂と虫原、二人は人生に絶望して心中を選ぶために静寂な樹海を訪れるのです。舞台設定は陰鬱で、読み手の胸を締め付けるような導入ですが、ここから意外な方向へと物語が展開していきます。

死を待つだけだったはずの二人。しかし木坂の口から「童貞のまま死ぬのか」という未練がこぼれた瞬間、静かな樹海の空気が大きく揺らぎます。その一言をきっかけに、虫原は「どうせ死ぬから」と自らの身体を差し出す決意を固めるのです。ここから先の流れは、ただのエロスに終わらず、絶望の中に差し込む“生きたい”という感情が交錯していく、純愛の物語へと変化していきます。

序盤から漂う緊張感と背徳感は、ページをめくるたびに強まり、読者はいつの間にか「二人は本当に死ぬのか、それとも生きる道を選ぶのか」という問いに引き込まれていきます。夜な夜なの筆致は、暗い題材を扱いながらも官能と純粋さを絶妙に同居させており、読後にただの快楽消費では終わらない余韻を残してくれます。