旅行先での出来事を経て、心の奥に重く沈む“罪”を抱えた小春。その表情には、自分の過ちを認めながらも、家族を思う強い意志が滲んでいます。母・京香と姉・結花の変化に気づいた瞬間、彼女の胸に芽生えたのは不安と焦り、そして「自分がなんとかしなければ」という切実な思いでした。けれど、その優しさこそが、皮肉にも新たな悲劇を呼び込むきっかけになっていく。作品は、小春の心の揺らぎを丁寧に描きながら、彼女の“覚悟”がどのように形成されていくのかを静かに浮かび上がらせていきます。読者はページをめくるたびに、彼女の痛みと葛藤を自分のことのように感じてしまうはずです。
“探偵の助手”との出会いが導く、残酷な運命
小春が街へ出かけたのは、母と姉の心を少しでも軽くしたかったから。ほんのささやかな優しさが、やがて取り返しのつかない悲劇へと繋がっていく。その途中で出会ったのが、京香が頼りにしていた探偵の“助手”を名乗る男でした。穏やかで誠実そうな口調、そして母の名前を自然に出すことで、小春の警戒心は少しずつ解かれていきます。
しかしその笑顔の裏には、狡猾に仕組まれた罠が潜んでいたのです。彼が差し出した“情報交換”という名の誘いが、次に起こる惨劇への入り口になるとは知る由もなく、小春は静かに運命の扉を開いてしまう。読者はその瞬間、心の奥にぞくりと冷たい予感を感じるはずです。
AV撮影現場で明かされる衝撃の真実
男に案内され、指定されたマンションの扉を開いた瞬間、小春の身体が固まりました。部屋の中には照明とカメラ、そして複数の男たちの視線。そこは情報交換の場などではなく、完全に整えられたAV撮影の現場だったのです。恐怖と混乱で息を呑む小春の耳に飛び込んできたのは、あまりにも残酷な言葉。「京香と結花を最近また犯してやった」──その一言が彼女の世界を音を立てて崩していきます。
信じたかった家族の平穏は、すでに壊されていた。怒り、絶望、そして涙。心が張り裂けそうなほどの痛みの中で、小春は“何かをしなければ”という思いに突き動かされていく。この場面の緊迫感は、ページ越しにも息苦しいほどに伝わってきます。
“復讐”の名のもとに描かれる、究極の自己犠牲
警察へ証拠を届けるため、小春が選んだのはあまりにも過酷な道でした。恐怖に震えながらも、彼女は自らの手で衣服を脱ぎ、カメラの前に立つ。母と姉を救うために、自分の身体を犠牲にしてでも真実を突きつけようとする姿に、言葉を失う読者も多いはずです。涙を浮かべながら、演技を装って腰を振る小春の姿は、もはや“演技”という枠を超えた純粋な決意そのもの。身体を通じて訴えるような彼女の行動には、復讐という言葉だけでは語り尽くせない深い愛と覚悟が宿っています。
ももまろ＆むにむにコンビによる筆致は、その痛ましさを艶やかに、そして残酷なほど美しく描き出している。最後のページを閉じたあと、胸の奥に残るのは快楽でも絶望でもなく、ひとりの少女が見せた“祈り”のような強さです。
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