「何度目かのはじめまして」──13年前の先輩と再び出会う、淫らで切ない運命のループ

『何度目かのはじめまして』は、“過去をやり直す”という誰もが一度は抱く願いを、魔術と性愛の交錯によって描き出すタイムリープ系アダルトADVです。

主人公・喜納夢斗は、退屈な毎日に空虚を抱えるアラサーの男。ある夜、猫の姿をした謎の存在“ラプラス”に導かれ、13年前の学園時代へと戻ってしまう。そこで出会うのが、記憶には存在しない黒髪の先輩・蝶舞翠。彼女は自らを夢斗の先輩と名乗り、部室で黒魔術を研究する妖艶な女性だ。夜ごと繰り返される儀式の中で、彼女の声、視線、そして肌の温もりが、夢斗の理性を静かに溶かしていく。過去を変えようとするたびに、ふたりの関係はより深く、より淫らに絡み合い、現実と幻想、愛と快楽の境界が溶けていく。彼女を救いたいという想いと、どうしようもなく惹かれていく欲望の狭間で、夢斗は気づくのだ。“再会”とは、罪深くも抗いがたい快楽そのものであるということを──。

黒髪の魔女と過ごす夜――ラプラスの導きが開く、淫靡な時間の扉

「何度目かのはじめまして」の始まりは、まるで深夜の夢が現実に染み出してくるような静寂の中で幕を開けます。主人公・喜納夢斗は、日々の繰り返しに満たされない思いを抱えたまま生きている男性です。仕事も人間関係も表面上はうまくいっているものの、心の奥には何かが欠けている感覚が常に残っているのです。

そんな彼の前に現れるのが、猫の姿をした“ラプラス”という謎の存在です。その瞳は底知れぬ知性を宿し、まるで夢斗の心の奥底を覗き込んでいるかのように感じられます。何気なく手に取った古びた魔術書を開いた瞬間、現実が歪み、時間の境界が崩れ落ちていきます。そして気がつけば、彼は13年前の学園時代に立っていました。懐かしいはずの風景はどこか異質で、記憶の中にない影が混じっています。

その中に立っていたのが、黒髪の先輩・蝶舞翠です。夜の闇をそのまま映したような艶やかな髪、儚げに微笑む唇、そして何かを思い出すように見つめる瞳。その存在は、まるで夢の続きを見ているような錯覚を与えます。彼女は静かに言葉を紡ぎます。「久しぶりね、夢斗くん。……あの日の続きを、しに来たの？」その一言に、夢斗の胸の奥で長く眠っていた記憶がざわめき始めます。

翠がひとりで開いているという「歴史文学研究部」の部室は、古い書物の匂いとほのかな甘い香りが混じり合う不思議な空間です。黒魔術を研究していると語る彼女の声には、理性を惑わせる響きがあります。その音を聞くたびに、夢斗の意識は現実から少しずつ遠ざかり、代わりに彼女への衝動が強くなっていくのです。

夜が深まり、月明かりが窓から差し込む頃、翠はゆっくりと部室の扉を閉め、夢斗の耳元で囁きます。「ねえ、あなたは魔術を信じるの？」その声は甘く、柔らかく、けれど確かに危うさを帯びています。二人を包む空気が一変し、時間さえもねじれるような錯覚に包まれるのです。

指先が触れ合うだけで呼吸が乱れ、体温が交わり、過去と現在の境が溶けていきます。翠の微笑みは妖しくも切なく、その眼差しに触れるたび、夢斗の中の現実が崩れていきます。彼女を抱きしめたいと思うのに、触れるたびに遠ざかっていくような不思議な感覚が残ります。それでも、彼はその瞳から目を離すことができません。なぜなら、その奥に“何度も繰り返してきた出会い”の記憶が見える気がするからです。黒髪に指を通した瞬間、彼の心に確信が芽生えます。――これは偶然ではありません。何度目かの“はじめまして”が、ふたりを再び結びつけ、淫らで抗えない夜の輪廻を開いていくのです。

“何度目”でも止められない快楽――過去をやり直すほど深まる愛欲の輪廻

過去をやり直せるという奇跡のような体験は、最初こそ救いのように思えたのです。失った時間を取り戻し、後悔をやり直し、もう一度正しい選択をすればすべてが変わる。そう信じて夢斗は魔術に身を委ねました。しかし、時が巻き戻るたびに、彼の心は次第に歪んでいきます。

蝶舞翠との関係が深まるほどに、彼女の微笑みの奥に潜む“違和感”が彼を惑わせるのです。何かが足りない。何かが噛み合わない。それでも、彼女に触れるたび、その違和感すら快楽に変わっていくのです。翠の指先が頬をなぞり、唇が近づくたび、理性は薄れていきます。その瞬間、彼の中で「やり直し」はもう後悔を修正するための手段ではなく、翠との逢瀬を繰り返すための“快楽の儀式”へと変わっていくのです。

どれだけ繰り返しても、彼女への欲望は尽きることがありません。抱きしめても、触れても、次の時間軸でまた会いたくなる。その無限の循環の中で、夢斗は気づくのです。――自分が求めていたのは救いではなく、終わりなき悦びそのものだということを。翠はそれを知っているかのように微笑み、優しく囁きます。「また会えたね、夢斗くん。今度は、離れないでね」その声に導かれるように、彼は再び時間の渦へと身を投じます。

記憶が重なり、体が交わり、魂が擦れ合う。そこに倫理も未来も存在しません。あるのはただ、繰り返すたびに濃くなる愛と快楽の残響だけです。夢斗の意識は次第に現実から遠のき、翠の温もりの中で溶けていきます。やり直すほどに深まっていくこの愛は、もはや逃れられない運命の輪。どんな結末を迎えようとも、彼はまた“何度目かのはじめまして”へと戻っていくのです。

主題歌「Re:何度目かのはじめまして」が描く、再会と喪失のエモーション

この作品を語る上で欠かせないのが、紫咲ほたるが歌う主題歌「Re:何度目かのはじめまして」です。この楽曲は、物語そのものを凝縮したような一曲であり、聴き終えたあとには胸の奥に静かな余韻が残ります。最初の一音が流れた瞬間、まるで翠と夢斗の再会が音になったかのように感じられるのです。切なさの中に温もりがあり、愛の中に確かな痛みがある。その歌詞のひとつひとつが、プレイヤーの心に直接語りかけてくるようです。

旋律は穏やかでありながら、どこか抗えない宿命を孕んでいます。過去をやり直すたびに積み重なっていく“はじめまして”の数。その重みを思わせるように、サビでは感情が静かに爆ぜ、翠の声が脳裏に蘇るような錯覚に包まれます。歌を聴きながら、プレイヤーは思うのです。繰り返すたびに失われ、そして再び出会う二人の姿は、決して悲劇ではなく、ひとつの祈りの形なのだと。たとえ結末が変わらなくても、そこに愛があったという事実だけが真実として残るのです。

エンディングで流れる浅葉リオの「雨のち、ふたり」もまた、物語の余韻を静かに締めくくります。雨の音とともに過去と現在が溶け合い、すべてを包み込むような温度が感じられます。涙がこぼれそうになるその瞬間、プレイヤーは気づくのです。これは単なるアダルトゲームではなく、“生きること”と“愛すること”を同時に描いた物語だったのだと。

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