2025年5月29日、コンパイルハートが手掛ける完全新作TPS『スカーレッドサルベーション』が、PlayStation 5・PlayStation 4・Steam向けに発売されました。PS4版はダウンロード専売という形になっており、後発としてXbox Series X/S版が2025年9月2日に登場予定です。開発には、コンパイルハートのほか共同開発としてネイロも参加しており、これまでの同社作品とはひと味違った挑戦が見えるタイトルとなっています。

本作のジャンルは「高難易度弾幕TPS」。いわゆる三人称視点のシューティングゲームでありながら、“死にゲー”と呼ばれる高い難易度を意識した設計が特徴です。公式が「高難度」「弾幕」「死にゲー」をキーワードとして掲げており、敵の攻撃を紙一重で避けながら反撃のチャンスを狙う、緊張感あふれるプレイ体験を前面に打ち出しています。さらに、被弾すると防御用のアーマーが破壊されていく「アーマーブレイク」システムを採用し、見た目とゲーム性の両方に刺激を与える仕様が盛り込まれています。

発売形態は複数用意されており、通常版(8,580円 税込)に加えて、設定資料集やサウンドトラックが同梱される「スペシャルエディション」(12,980円 税込)、さらにダウンロードコンテンツをセットにした「デジタルデラックス版」(10,780円 税込)が販売されています。CEROレーティングはB(12歳以上対象)で、ビジュアルや演出にはやや刺激的な要素も含まれますが、全年齢向けのTPSと比べても幅広い層が遊べる内容となっています。

コンパイルハートはこれまでRPG作品を中心に展開してきましたが、『スカーレッドサルベーション』ではTPSという全く異なるジャンルに挑戦しており、ファンからも発売前は「どのような仕上がりになるのか」と注目を集めました。発売からしばらく経った今、その評価は賛否が大きく分かれており、単なる新作紹介にとどまらない深掘りが必要な一作と言えます。

ゲームジャンルとコンセプト|“死にゲー”×弾幕TPSという挑戦

『スカーレッドサルベーション』が掲げる最大の特徴は、「高難易度」「弾幕」「死にゲー」という三つのキーワードを組み合わせた新しいTPS体験にあります。コンパイルハートといえば、美少女キャラクターやRPG要素を前面に押し出した作品で知られていますが、今回はそこから一歩踏み出し、硬派なアクション性と緊張感を前面に押し出したゲームデザインに挑んでいます。

TPS(サードパーソン・シューティング)は三人称視点でキャラクターを操作し、敵との撃ち合いや回避行動を行うジャンルですが、本作はそこに弾幕シューティングの要素を融合させています。画面狭しと飛び交う無数の弾丸をかいくぐりながら、正確に射撃を行う必要があり、ただ敵を倒すだけではなく「生き残るための立ち回り」が重要になります。この弾幕の密度は、従来のTPSファンだけでなく、シューティングゲーム好きにも一目置かれるポイントになっています。

さらに、「死にゲー」という要素が加わることで、ゲームは一層緊迫したものになっています。敵の攻撃は苛烈で、一瞬の油断が命取り。被弾を重ねると防御を担うアーマーが損傷し、最終的にはインナー姿になってしまう「アーマーブレイク」システムが発動します。この演出は単なるビジュアルの変化ではなく、防御力低下という実利的なデメリットを伴うため、プレイヤーの緊張感を高める仕掛けとして機能しています。

また、敵の配置やステージ構造がランダムに変化するローグライク要素も取り入れられており、毎回違う状況下での攻略を求められます。これにより、単なる覚えゲーに陥らず、プレイヤーごとに異なる体験が生まれる設計になっています。こうしたシステムの組み合わせは一見魅力的ですが、果たしてその挑戦は成功したのか――その評価は後半で詳しく触れていきます。

ストーリー概要|記憶を失った少女ウィローと謎のAI

物語は、記憶を失った少女ウィローが、廃墟と化した軍事施設で目を覚ます場面から始まります。目を開けた瞬間から彼女の頭の中には、正体不明のAIの声が響き、その導きに従って行動を開始します。なぜ自分がここにいるのか、何が起きたのか、その答えは一切分からないまま、ただ生き延びるために足を進めるしかありません。

施設内は静寂とは無縁で、無数の殺戮機械が徘徊しています。視界に入るものすべてが敵であり、一瞬でも気を抜けば命を落としかねない状況です。ウィローはAIの声に従いながら、破壊された通路や暗い格納庫、そして制御不能になった防衛システムが待ち構えるエリアを突破していきます。冷たい金属の壁と不気味な機械音に包まれる空間は、プレイヤーに常に緊張感を与え続けます。

ストーリーの進行は単なる脱出劇にとどまらず、断片的に提示される情報から、この施設で何が行われていたのか、ウィローが何者なのかという謎が少しずつ浮かび上がってきます。プレイヤーはウィローと共に、その真実を探る旅を続けることになります。こうした背景は、単なるTPSアクションに物語的な深みを与え、緊張感と好奇心を同時に刺激してくれます。

ゲームシステム解説|アーマーブレイクとエクソスキルの戦略性

『スカーレッドサルベーション』のプレイ感を大きく特徴付けているのが、被弾によって防御装備が徐々に破損していく「アーマーブレイク」システムです。敵からの攻撃を受けるたびにアーマーが砕け落ち、防御力は目に見えて低下していきます。すべてのアーマーが破壊されるとウィローはインナー姿となり、そこからは直接体力を削られるため、より慎重な立ち回りが求められます。この仕組みは単なる見た目の変化にとどまらず、プレイヤーに緊張感とリスク管理の意識を植え付ける重要な要素になっています。

さらに、本作には「エクソスキル」と呼ばれる強化要素が存在します。これはパッシブ効果を持つスキルで、装備することで体力の自然回復やリロード時間の短縮、移動速度の向上といった恩恵を得られます。どのスキルを選ぶかによって戦い方や攻略ルートの幅が変わるため、プレイヤーの戦略性が試される部分でもあります。

武器のバリエーションは10種類以上あり、近距離に強いショットガンや、連射性能の高いアサルトライフル、広範囲を攻撃できるランチャーなど、状況に応じた使い分けが攻略の鍵を握ります。加えて、ステージは挑戦するたびにランダムで構造が変化するローグライク仕様になっており、同じルートをなぞるだけでは通用しません。敵の配置やアイテムの出現場所も変化するため、瞬時の判断力と適応力が必要になります。

一度倒れると拠点へ戻されますが、一部の強化要素は引き継がれるため、試行錯誤を繰り返す中で少しずつキャラクターを成長させられます。この成長サイクルは、失敗を前向きに捉えられる設計となっており、挑戦を重ねるほど自分のプレイスキルと装備が磨かれていく感覚を味わえます。

主要キャラクター&豪華声優陣

物語の中心となるのは、記憶を失った少女ウィロー・マーティン。彼女は本作のプレイヤーキャラクターであり、プレイヤーが操作する存在そのものです。外見は華奢ながらも芯の強さを感じさせ、危険な施設を命がけで突破していく姿は、遊ぶほどに愛着が湧いてきます。そのウィローを演じるのは、熱量のこもった演技で知られるファイルーズあいさん。繊細さと力強さを兼ね備えた声は、絶望的な状況に置かれたキャラクターの感情をしっかりと引き立てています。

ウィローを導く謎の存在であるAIには、低く響く独特の声質で多くのファンを魅了してきた諏訪部順一さんが起用されています。冷静沈着で、時に意味深な助言を投げかけるAIの存在は、プレイヤーの想像力を掻き立てます。物語を進める中で、このAIがどのような目的を持ち、ウィローとどのような関係にあるのかが少しずつ明らかになっていく過程は、本作の大きな魅力の一つです。

豪華な声優陣の演技が加わることで、ゲームプレイは単なるアクションの連続ではなく、キャラクター同士のやり取りや感情の揺れ動きがしっかりと感じられる体験に変わります。特に緊迫した戦闘中やストーリーの転換点で挟まれる会話は、プレイヤーの没入感を一気に引き上げてくれます。こうした演出の積み重ねが、ウィローとAIという二人だけの閉ざされた世界を、濃密で印象深いものにしているのです。

ユーザーレビューとメディア評価の傾向

発売前は「高難易度死にゲーTPS」というキャッチコピーと、コンパイルハート初の本格TPSという挑戦的な試みに注目が集まっていました。しかし、実際に発売されると、その評価は想像以上に大きく割れています。特にユーザーからは厳しい意見が多く、「想定よりも難易度が低く、死にゲーとしての緊張感に欠ける」という声が目立ちました。敵やマップのバリエーションが乏しく、同じ展開の繰り返しになりがちという指摘も多く寄せられています。中には「フルプライスで買う価値は感じられない」と、価格と内容のバランスに不満を示す意見もありました。

また、海外を含む複数のレビューサイトやSNSでは、『Returnal』に似すぎているという感想が相次ぎ、その上でクオリティが劣る「劣化クローン」という厳しい評価が定着してしまっています。ゲームプレイのテンポやシステム構造が近いことは確かですが、グラフィックや演出面の完成度、敵AIの挙動などで比較され、結果的にマイナスイメージが強くなった印象です。

もちろん全てが否定的というわけではなく、少数ながら好意的な意見も見られます。例えば「キャラクターの操作感は悪くなく、思い通りに動かせる」「キーコンフィグがしっかり用意されていて遊びやすい」といった声です。また、序盤においてアーマーブレイクが防御の役割を果たし、初めてTPSに触れるプレイヤーでもとっつきやすいという評価もありました。しかし、こうした長所はゲーム全体の評価を覆すほどの強みにはならず、あくまで部分的な評価に留まっています。

総じて、ユーザーとメディアの評価は「期待と現実の差が大きい」という一点に集約されます。挑戦的なコンセプトや豪華声優陣の存在感は確かに魅力的ですが、それらを最大限に活かすためのゲームプレイやボリューム面が不足していたことが、賛否を分ける結果につながったといえます。

Returnalとの比較とその評価の分かれ目

『スカーレッドサルベーション』が発売されて以来、特に多くのプレイヤーやメディアが話題にしたのが、『Returnal』との類似性です。両作とも三人称視点のシューティングであり、ステージ構造や敵の配置がランダムに変化するローグライク要素を備えています。さらに、苛烈な弾幕を避けながら射撃を行うというプレイ感覚も重なり、比較対象として名前が挙がるのは自然な流れでした。

しかし、この比較は必ずしも本作にとって有利なものではありませんでした。『Returnal』は緻密なゲームバランス、滑らかなアニメーション、そして圧倒的なビジュアル表現で高い評価を得ており、その完成度が基準となってしまったのです。一方の『スカーレッドサルベーション』は、敵やマップのバリエーション不足、単調な戦闘の繰り返しといった課題が目立ち、同じ土俵で比較するとクオリティの差が浮き彫りになりました。

もちろん本作にも独自性は存在します。アーマーブレイクによる視覚的な変化や、豪華声優陣の演技によるストーリー演出は、『Returnal』にはない魅力です。しかし、それらはゲームプレイの根幹を支える要素というよりは、演出面やキャラクタービジュアルの付加価値に近く、長時間のプレイに耐えるゲーム体験そのものを底上げするまでには至りませんでした。

結果として、多くのプレイヤーが「似ているのに劣化している」という印象を持ち、そこからネガティブな評価が定着してしまったわけです。評価が分かれたポイントは、単なる見た目やシステムの差異ではなく、「挑戦的なコンセプトを実際のゲーム体験にどこまで落とし込めたか」という部分にあったといえます。

プレイして感じた魅力と残念なポイント

実際に『スカーレッドサルベーション』をプレイしてみると、まず目を引くのはアーマーブレイクの演出です。被弾のたびに防御装備が壊れていく様子は視覚的なインパクトが強く、戦闘の緊張感を自然に高めてくれます。特に、最後のアーマーが砕け散った瞬間に感じる“もう後がない”というプレッシャーは、本作ならではの体験と言えるでしょう。また、豪華声優陣によるキャラクターボイスは物語の没入感を引き上げ、戦闘中やイベントでのセリフがキャラクターの個性を際立たせています。

操作性の面でも、キャラクターの動きは直感的でレスポンスが良く、回避や射撃を思い通りに行える点は快適です。キーコンフィグの自由度も高く、自分に合った操作設定でプレイできるのはありがたいポイントです。こうした技術的な安定感は、TPSとしての基礎部分をしっかり支えています。

一方で、残念に感じる部分も少なくありません。最も大きな課題は、敵やマップのバリエーション不足です。数時間プレイすると、見慣れた敵と似たような地形ばかりが続き、新鮮味が薄れていきます。ローグライク要素によって配置や構造が変わる仕組みはあるものの、その変化幅は限定的で、結果的に同じ展開を繰り返す印象が拭えません。また、「高難易度」を掲げている割には敵の攻撃パターンが単調で、死にゲー特有の緊張感や達成感が持続しにくい点も気になりました。

こうした魅力と課題のコントラストは、本作の評価が割れる要因になっています。アーマーブレイクやボイス演出などの個性的な要素が光る一方で、ゲーム全体のボリュームや変化に乏しい構造が、それらの魅力を活かしきれていない印象を残してしまうのです。

購入を検討している人へのアドバイス

『スカーレッドサルベーション』は、TPSというジャンルにローグライクと弾幕要素を掛け合わせ、そこにアーマーブレイクという独自の仕掛けを加えた意欲作です。豪華な声優陣による演技や、ビジュアル面での演出は確かに魅力があり、操作性も快適です。しかし、その一方で、敵やマップの種類が少なく、ゲームプレイが単調になりやすいという課題も抱えています。

もしあなたが本作に興味を持っているのであれば、まず自分が何を重視するタイプのプレイヤーかを考えてみてください。キャラクターデザインや世界観、声優の演技といった演出面に強く惹かれるなら、ある程度の満足感は得られるはずです。一方で、TPSとしての歯ごたえや長時間プレイに耐えるゲーム性を求める場合、その期待に応えてくれるかどうかは慎重に見極める必要があります。

特に、高難易度アクションを求める人は、事前情報と実際の難易度の差に戸惑う可能性があります。死にゲーならではの緊張感や、繰り返し挑戦して乗り越える達成感を重視するなら、他の選択肢と比較してから判断するのが無難です。加えて、価格設定がフルプライスである点も考慮すべきでしょう。セールのタイミングを狙う、あるいは体験版やプレイ動画で事前に雰囲気を確認しておくのも一つの手です。

結果的に、このゲームは尖った魅力を持つ反面、その尖り方が人を選ぶタイプの作品といえます。あなたの好みやプレイスタイルに合致すれば、他では味わえない体験を提供してくれますが、そうでない場合は期待とのギャップに戸惑うかもしれません。

総評|『スカーレッドサルベーション』はどんな人に向いているのか

『スカーレッドサルベーション』は、コンパイルハートがこれまでの路線から一歩踏み出し、高難易度TPSという新たなジャンルに挑戦した意欲作です。アーマーブレイクによる緊張感の演出や、豪華声優陣によるキャラクター描写は確かに魅力的で、世界観やビジュアル面の個性はしっかりと存在しています。こうした演出に価値を感じる人にとっては、唯一無二の体験になり得る作品です。

しかし、TPSとしてのゲームプレイを主軸に評価するなら、課題は無視できません。敵やマップのバリエーション不足、難易度設定と事前の宣伝との乖離、繰り返しプレイするうえでの新鮮味の薄さ――こうした点が積み重なり、プレイヤーによっては物足りなさを感じる可能性があります。特に、スリルと達成感を求める死にゲー愛好者には、期待とのギャップが大きく映るかもしれません。

このゲームをおすすめできるのは、世界観やキャラクターデザインを重視し、物語や演出を楽しみながらプレイできる人です。逆に、戦略的な戦闘や豊富なコンテンツ量を求める人は、セールやアップデートでの改善を待ってからの購入が賢い選択になるでしょう。

総じて、『スカーレッドサルベーション』は光と影がはっきりと分かれた作品です。強みが自分の好みに合えば、長く印象に残る一作となりますし、合わなければ数時間で手を止めてしまうかもしれません。だからこそ、購入前に自分が何を重視するかを見極め、その上で選択することが、このゲームを最大限楽しむための第一歩になります。