ゲームを愛する人なら誰しも、忘れられない名作に出会った経験があると思います。けれど、その裏で「忘れられない駄作」として語り継がれるタイトルも確かに存在しています。今回は、ゲーム史に深く名を刻んだにもかかわらず、その理由が“圧倒的な低評価”であったという、ある意味伝説的な5本を取り上げます。

単なる“つまらない”というレベルではありません。技術的な破綻、納期に追われた未完成状態、ユーザーの期待を大きく裏切った内容──そんな様々な事情が重なって、プレイヤーたちの怒りや落胆を引き起こし、時には炎上へと発展していったゲームたちです。

それでも興味深いのは、これらのゲームが“失敗”の象徴として葬り去られることなく、今なお語り継がれている点にあります。ネット上ではネタとして消費されることもあれば、業界の反省材料として再評価されるケースもあり、結果的にゲーム史の中である種の“ポジション”を獲得してしまっている。つまり、悪名は無名に勝るということなのかもしれません。

この記事では、「低評価という称号」を背負うことになった5本のゲームを紹介し、それぞれがなぜそこまで酷評されるに至ったのか、その背景にある事情も踏まえて解説していきます。

第1位:『Big Rigs: Over The Road Racing』—動かないAIと“YOU’RE WINNER!”の衝撃

真っ先に紹介せざるを得ないのが、『Big Rigs: Over The Road Racing』という伝説のレースゲームです。2003年にPC向けに発売されたこのタイトルは、発売当時から現在に至るまで「ゲームとして機能していない」という意味で、数々のランキングで“史上最低”と評されてきました。

そもそもレースゲームであるにもかかわらず、肝心のレース相手であるAIが動かないという時点で、ゲームの成立条件を根底から壊してしまっているのですが、それだけでは終わりません。物理演算は完全に崩壊しており、トラックが坂道を逆走すれば無限に加速して空を飛ぶような挙動を見せたり、障害物をすり抜けたりと、プレイヤーの常識をことごとく裏切る仕様が次々と現れるんです。

一応、ゴールすると「YOU’RE WINNER!」というメッセージが画面に表示されるんですが、その文法すらおかしいという…これもまた有名な話で、今ではミームとして扱われることもありますね。まともなルールや競技性が一切存在しないため、もはやゲームというより“バグの塊”といったほうがしっくりくるかもしれません。

ゲームレビューサイト「GameSpot」がかつてこのタイトルに対して、「救いようのない点がない」という言葉を残したことは、多くのプレイヤーにとって記憶に残っていると思います。それだけ致命的な欠陥だらけだったわけですが、逆にその酷さが話題となり、いわゆる“ネタゲー”としてある意味人気を集めたという側面もあります。

ちなみに、2025年にはSteam上で再リリースされたんですが、そこでも「史上最悪のレースゲーム」として再注目されていたというのが、このゲームの異様な存在感を物語っている気がします。多くのゲームが記憶の彼方に消えていく中で、ここまで“ダメな理由”で語り継がれるというのは、ある意味で稀有な存在です。

第2位:『E.T.(Atari 2600)』—アタリショックを招いた伝説のゲーム

次に紹介するのは、1982年にリリースされたアタリ2600用ソフト『E.T.』です。このゲームは、映画『E.T.』の大ヒットを受けて、クリスマス商戦に向けて急ピッチで開発されたもので、なんと制作期間はたったの6週間。そんな無理のあるスケジュールの中で誕生したことが、後々まで語り継がれる“伝説の失敗”の引き金になっていくんです。

このゲームの問題は、内容そのものだけでなく、その背景にあるビジネス上の判断にもあります。莫大なライセンス費用をかけて作られたにもかかわらず、実際のゲームは非常に分かりにくいルール設計と、同じような場面を延々と繰り返すゲームプレイが続くだけで、当時の子どもたちを混乱させました。その結果、大量に返品されることになり、最終的には売れ残ったカートリッジがニューメキシコ州の砂漠に埋められるという、もはや都市伝説としか思えないエピソードまで現実のものとなりました。

ただ、ここで少し補足しておきたいのは、「内容が完全にクソゲーだったか」という点については、実は意見が分かれているんですね。当時の一部レビューでは、そこまで酷評されていたわけでもありませんし、ゲームの操作方法さえ理解できれば一応“クリアできる”作りにはなっていました。にもかかわらず、なぜこれほどまでに“史上最悪のゲーム”というイメージが定着したのか。その大きな理由は、ゲームそのものよりも、結果として引き起こしたアタリ社の経営破綻、つまり“アタリショック”の象徴になってしまったことにあるんです。

この一件は、ゲーム業界全体に深刻な影響を及ぼし、北米市場が一時的に冷え込む原因の一つにもなりました。だからこそ、『E.T.』というタイトルには単なる“ゲームの出来不出来”を超えた、歴史的な重みがのしかかっている。ある意味では、その失敗こそが、今のゲーム業界にとっての教訓として語り継がれているとも言えるかもしれません。

第3位:『Superman 64』—リングをくぐるだけのスーパーマン

ここまでで、技術的にも商業的にも“伝説級”の失敗作を見てきましたが、ある意味、純粋なゲーム体験としての“苦行”を味わわせてくれるタイトルとして外せないのが、1999年にリリースされたNintendo 64用の『Superman 64』です。この作品は、スーパーマンという強力なIPを使いながら、そのポテンシャルを徹底的に無視した内容で、プレイヤーに深い落胆を与えました。

まずプレイしてすぐに気づかされるのが、ゲームの舞台が現実のメトロポリスではなく、“仮想世界”という設定になっている点です。この仮想空間がひたすら霧に覆われていて視界が悪く、しかもその中でやらされるミッションの大半が、空中に浮かぶリングを順番にくぐっていくだけという非常に単調な作業なんですね。スーパーマンといえば、敵をなぎ倒す爽快感やダイナミックな飛行アクションを期待したくなるはずなんですが、このゲームではそういった要素は一切排除されていて、ただただ延々と“リング”です。

しかも、その操作性がとにかく最悪で、飛行中の挙動がフワフワしていて思い通りに動かないうえに、当たり判定もかなり曖昧。ひとつでもリングを外せば即失敗、という厳しい条件なのに、コントロールが思うようにいかないので、プレイヤーはただストレスを感じるだけになってしまうんです。極めつけは、失敗時に表示される「LEX WINS」の文字。この“勝者は敵”という演出が、プレイヤーの精神にさらに追い打ちをかけてきます。

もともとこのゲームは、アニメ『スーパーマン』の世界観をゲーム化するという壮大な企画として進められていたらしいんですが、実際には技術面やライセンスの制限などが重なって、完成度を大きく損なう結果となってしまいました。その結果、数多くのレビューサイトで酷評され、「Nintendo 64時代の黒歴史」として語られることになったんですね。

見た目こそスーパーマンですが、実際にやらされるのは“自由に飛べない空中リングくぐりゲーム”という落差の大きさが、逆に人々の記憶に深く刻まれてしまった。そんな意味でも、このタイトルは“期待値とのギャップ”という観点から語るに値する作品なんです。

第4位:『Ride to Hell: Retribution』—すべてが“雑”な地獄ツーリング

そして次に取り上げるのが、2013年にリリースされたアクションゲーム『Ride to Hell: Retribution』です。PS3、Xbox 360、PC向けに発売されたこのタイトルは、いわば“全方位でダメだったゲーム”として悪名高く、当時のユーザーと批評家を深く落胆させました。

まず前提として、このゲームはもともとオープンワールドのバイカーアクションという野心的なコンセプトを掲げて開発されていたんですが、途中で大きな方針転換があったようで、最終的には一本道のアクションゲームに落ち着いてしまったんですね。その開発経緯からもわかる通り、完成版は端々に“未完成感”が漂っていて、全体的に雑な印象が否めません。

たとえば、グラフィックやテクスチャの粗さが目立ち、登場キャラのモデリングも非常にチープ。演出や演技もお世辞にも“リアル”とは言えないレベルで、特にカットシーンの繋ぎやセリフ回しが不自然すぎて、逆に笑えてしまうような場面が連発します。ゲームプレイに関しても、戦闘の操作性が悪いうえに敵のAIは単調、さらにバイクアクション部分は物理演算のバランスが崩壊していて、爽快感のかけらもありません。

中でも最も炎上したのが、性的なシーンの扱いでした。男女のラブシーンを描いた場面が複数存在するんですが、なぜかキャラクターたちは服を着たまま無言で不自然に動いているという、誰が見ても“おかしい”としか言えない演出が堂々と登場するんです。このシーンがSNSや動画配信者の間で拡散され、「笑ってはいけないバイカーゲーム」みたいな扱いになっていったのは、ある意味当然だったかもしれません。

結果として、『Ride to Hell: Retribution』はそのタイトル通り「地獄への道」を突き進んでしまったわけですが、ただひとつ興味深いのは、これだけ酷評されながらも、一部では「逆に見てみたい」「どれほど酷いのか体験したくなる」という好奇心を掻き立てる要素にもなっているところです。そう考えると、評価が低いこと自体がひとつの価値になってしまっているのかもしれません。

第5位:『Cyberpunk 2077』『No Man’s Sky』『Fallout 76』—炎上からの復活劇

ここまでで紹介してきたタイトルは、ある意味“最初から最後までどうしようもなかった”というゲームたちでしたが、最後に挙げる3本は少し毛色が違います。『Cyberpunk 2077』『No Man’s Sky』『Fallout 76』──いずれもビッグタイトルとして大きな期待を集め、発売前は華々しい注目を浴びたにもかかわらず、その“発売直後”に一気に信頼を失うほどの大炎上を引き起こしました。

まず2020年に登場した『Cyberpunk 2077』。このタイトルは、CD Projekt REDが『ウィッチャー3』で築いた評価を背負って登場した超大型RPGだったわけですが、発売と同時に旧世代機での動作不良、深刻なバグ、そしてそもそも進行不能になるような不具合まで多数報告される事態となり、SNSは怒号に包まれました。中でも異例だったのが、ソニーがPlayStation Storeから本作を一時的に削除したという対応。この一件は、ゲーム史においても極めて稀な事態として語り継がれています。

続いて2016年にリリースされた『No Man’s Sky』も同様です。当初、開発元であるHello Gamesが語っていた数々の機能──マルチプレイ、広大な惑星間探索、動的に変化する生態系など──が実装されておらず、発売当時のプレイヤーからは「約束されていたゲーム内容とまったく違う」として猛批判が集中。中には、開発者が死亡予告を受けるほどの過激な反応もあったほどで、ここでも失望感が爆発するかたちとなりました。

そして2018年、Bethesdaが放った『Fallout 76』。こちらは、オンラインマルチプレイに対応した『Fallout』シリーズの新たな挑戦として注目を集めましたが、実際にはバグまみれの未完成品で、NPCが存在しない広大なマップをさまよう“孤独なサバイバル体験”に終始したんですね。それに加えて、コレクターズエディションの粗悪なキャンバスバッグ問題や、限定ラム酒の品質騒動など、ゲーム外でも立て続けに炎上する騒ぎが相次ぎました。

ただ、ここで特筆すべきなのは、この3本が“その後”に見せた姿なんです。それぞれに開発チームが粘り強くアップデートを重ね、今では当初の評価から大きく持ち直して、一定の評価を取り戻しているんですね。『Cyberpunk 2077』は最新パッチと大型DLCでついに“本来の姿”を見せつけ、『No Man’s Sky』は数年かけて“約束された世界”を完成させました。そして『Fallout 76』もNPCの追加や各種改善によって、ある程度プレイアブルな状態へと進化しています。

つまり、この3本は“低評価ゲーム”として始まったものの、そこから努力によって再生していったという、ある意味“救済された炎上作”なんです。その過程も含めて、ゲーム業界の厳しさと希望を同時に象徴している存在だと言えるのではないでしょうか。

まとめ:なぜ〇〇ゲーは語り継がれるのか?

ここまで、“ゲーム史に名を刻んだ最低の5本”という切り口で、それぞれ異なる形で大きな低評価を受けたタイトルたちを紹介してきました。振り返ってみると、どのゲームにも共通していたのは、プレイヤーが“何かを期待していた”という事実です。そしてその期待が、技術的欠陥、未完成な内容、あるいは過剰なマーケティングとのギャップによって打ち砕かれた時、人は「最低だった」と感じてしまう。つまり、落胆の大きさが評価に直結しているということなんですね。

とはいえ、こうした“失敗作”がただネガティブな意味で終わるかというと、決してそんな単純な話ではありません。『Big Rigs』や『Superman 64』のようにネタ化されて愛されている例もあれば、『Cyberpunk 2077』のように炎上から這い上がって評価を回復させたタイトルもある。その意味では、“最低評価”というレッテルすらも、時の流れと共に別の価値に転化していく可能性があるのかもしれません。

ゲームというのは、常に創造と挑戦の連続です。そのなかで成功もあれば、当然失敗もある。そして失敗の中には、未来への教訓や再起のチャンスが含まれていることも多いです。だからこそ、今回取り上げたような“黒歴史”ですら、今のゲーマーや開発者たちにとって、どこかで役に立っているんじゃないか──そう思えてなりません。

この記事が、ただの“笑い話”としてではなく、ゲームという文化の裏側を少しでも深く知るきっかけになれば嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。