『ルーンファクトリー』シリーズの最新作として、2025年6月5日に発売された『龍の国 ルーンファクトリー』は、Nintendo Switch/Switch 2、そしてPC(Steam)に対応したタイトルとして、注目を集めています。発売当初は5月末を予定していたものの、数日遅れてのリリースとなったことで、開発への丁寧なこだわりや調整力に好感を持ったファンも少なくありません。

今作は、長く続くシリーズの基本コンセプトである“ファンタジー世界での冒険と生活の両立”をしっかりと継承しながらも、新たな挑戦が多数盛り込まれている点が特徴になっています。たとえば、プレイヤーは「大地の舞手(まいて)」という新たな役割を担うことになり、従来以上に自然との一体感や神秘的な力の存在を強く感じながら物語を進めていく構成となっています。
開発・発売は、これまでと同様に株式会社マーベラスが手がけており、海外ではXSEED Games/Marvelous USAが展開を担当しています。ディレクターはシリーズファンにはおなじみの前川司郎氏が続投しており、過去作との橋渡しを感じられるような演出や空気感も、自然と作品に溶け込んでいます。
価格帯についても、プラットフォームによって若干の差が設けられており、SwitchおよびPC版が税込7,678円、そしてSwitch 2版は8,678円と設定されています。次世代機ならではの表現力や操作性の向上が感じられる分、少し高めの価格にも納得がいくといった声が多く見られます。
世界観と物語の舞台
今作『龍の国 ルーンファクトリー』の物語は、「アズマ」と呼ばれる東方の地を舞台に展開していきます。この「アズマ」は、どこか懐かしさを感じさせる和風の風景と、幻想的な自然が調和した独自の世界観をもつ地域で、これまでのシリーズとは一線を画すビジュアルと雰囲気をたたえています。山や川のある里山の景色、静かに揺れる竹林、そして神社のような建物など、プレイヤーの視界に映る一つひとつの情景が、和の美意識を感じさせてくれます。
そんな風光明媚な地が、かつて「龍星崩落(りゅうせいほうらく)」と呼ばれる大きな災厄に見舞われたことで、土地がバラバラに引き裂かれ、世界に生命の力──つまり“ルーン”が失われてしまったという背景を持っています。プレイヤーが操作する主人公は、そんな荒廃した世界の中で目を覚ます人物。しかも、過去の記憶を一切持っていない状態でのスタートになります。
しかし、ただの記憶喪失では終わりません。主人公には特別な使命が託されており、自身が「大地の舞手」と呼ばれる存在であることが明らかになっていきます。この「舞手」という設定こそが、今作における最も大きな核でもあり、後述する「舞」システムの重要性にもつながってきます。
プレイヤーは、そんな主人公として世界を旅し、失われた神々の行方を探す壮大な冒険へと身を投じていくことになります。ただ単にバトルをこなすだけではなく、里での生活や出会う人々との関係づくりも大切な要素となっていて、世界の再生を少しずつ実感していける流れがしっかり用意されています。

ゲームシステムの革新
『龍の国 ルーンファクトリー』の魅力は、ただ世界観が魅力的なだけにとどまりません。今作では、ゲームプレイそのものの手触りに深く関わってくるいくつもの革新的なシステムが導入されていて、プレイヤーはその一つひとつを実感しながら物語と生活を進めていくことになります。
とりわけ注目されているのが、「舞(まい)」と呼ばれる新たな能力の存在です。主人公は「大地の舞手」として、特別な舞を舞うことで作物の成長を促したり、戦闘時には回復や攻撃といった効果を発揮したりと、非常に幅広い用途でこの力を活用していけるようになっています。そしてこの舞の効果は、使用する「神器(しんき)」によって変化していく仕組みになっているため、プレイスタイルに応じたカスタマイズ性の高さも楽しめるポイントになっています。
たとえば「鼓の舞」では仲間や自分の体力を癒すことができ、「剣の舞」では火属性の攻撃で敵に大きなダメージを与えることが可能です。戦闘中に選択する舞の種類によって立ち回りががらりと変わるため、状況判断が問われる場面も自然と増えていきます。それだけでなく、「神楽舞」や「神がかり舞」といったより神聖な力を宿した舞も登場しており、ストーリーの進行や特定のイベントと連動することで解放されていく仕掛けも丁寧に作り込まれています。
一方で、日々の暮らしの中でも舞は重要な役割を果たします。水やりや種まきなどの農業作業を効率化することもできるようになっており、「舞」という要素が生活パートとバトルパートの両方に橋をかけているような印象を受けます。その結果、どちらか一方に偏ることなく、自然と両立させたプレイ体験が成立していく流れが出来上がっています。

また、もう一つの大きな軸として語られるのが、「里の復興」システムの存在です。これはシリーズおなじみの“街づくり”要素をさらに発展させたもので、プレイヤーは「里山づくり」と呼ばれる形で、畑や水路、建物などを自分の手で配置していきながら、荒廃した土地を少しずつ再建していくことになります。その過程で発展していく里の姿は、単なる見た目の変化だけにとどまらず、住人の数や利用できる設備の幅も大きく広がっていくようになっています。
さらに、「ふるさとミッション」と呼ばれる依頼を達成していくことで、里のレベルが段階的に上がっていく設計になっていて、この点もまたプレイヤーのやり込み欲を自然と刺激してくれます。発展の過程で、農業の効率が上がったり、新たな設備が解放されたりと、実利面でのメリットも大きいため、単なる箱庭的な要素にとどまらず、プレイ全体のテンポ感や快適さにも関わってくる要素になっています。

戦闘と仲間の編成
『龍の国 ルーンファクトリー』における戦闘は、シリーズの中でもとりわけダイナミックな体験へと進化しています。プレイヤーは広大なフィールドを自由に移動しながら、リアルタイムでアクションを展開していく仕組みになっていて、攻撃・回避・スキル使用といった基本的な操作感はそのままに、「舞」の活用によって戦術の幅が格段に広がっているのが印象的です。
戦闘の中でも特に注目したいのが、パーティ編成の自由度です。主人公自身に加えて、メイン3人・サブ3人の仲間を編成することが可能で、最大7人編成というスケール感のあるバトルが展開されていきます。それぞれのキャラクターが異なる役割を持っており、たとえば近接戦を得意とする前衛タイプもいれば、回復や支援に長けた後方支援キャラ、あるいは遠距離からの攻撃をメインとするユニットも揃っています。こうしたバランスの中で、どういう編成を組むかによって、戦い方そのものがガラリと変わってくるのが面白いところです。
さらに、バトル中に使う「舞」も戦術の鍵になります。生活パートでは農業に使っていた舞が、戦闘においては攻撃や回復、状態異常の解除といったスキルとして効果を発揮してくれるため、単なるサブ要素にとどまらず、戦闘の中心にしっかりと据えられているのが今作のポイントです。どの神器を使い、どの舞をどのタイミングで発動するか。それを考えるだけでも、バトルがより戦略的な遊びへと変わっていくのを感じられるはずです。
また、今作では新たに「弓」と「呪符(じゅふ)」という2つの武器カテゴリが追加されました。弓は遠距離からの狙撃や広範囲攻撃に向いており、呪符は属性魔法のような使い方ができる特殊な武器として位置づけられています。どちらも既存の剣や斧、杖といった武器とはまた違った役割を持っており、新しい戦術の可能性を引き出してくれる要素として、プレイヤーにとっては試す価値のある存在になっています。


そして戦闘面でのもうひとつの大きな特徴が、魔物(いわゆるモンスター)との共闘です。ストーリーをある程度進めていくと、特定の条件下で魔物を仲間にすることが可能になり、彼らを戦闘要員として連れていくことができるようになります。しかも、仲間にした魔物には騎乗することも可能で、移動手段として使うだけでなく、専用モーションによる攻撃や主人公へのダメージ肩代わりなど、非常に頼もしい存在として戦線を支えてくれるようになるのです。
このように、仲間や魔物との連携、「舞」の活用、そして新武器の導入によって、戦闘の深みと自由度はこれまで以上に高まっています。アクションが得意な人はもちろん、戦略を練ることに喜びを感じるプレイヤーにとっても、大きな満足感を得られる設計になっています。
恋愛・結婚システムの進化
『龍の国 ルーンファクトリー』における生活要素の中でも、特に注目されているのが恋愛と結婚に関するシステムです。シリーズとしても長年親しまれてきた要素ではありますが、今作ではその自由度とドラマ性が格段に深まっており、プレイヤーの物語体験により強く寄り添ってくるようになっています。
まず、主人公は男女どちらか──スバル(CV:榎木淳弥)またはカグヤ(CV:石川由依)──を選択して物語を進めていく形式になっているのですが、ここで選ばなかった方の主人公も、しっかりとストーリーの中で登場し、しかも恋愛対象となる点が特徴的です。つまり、男女どちらを選んだとしても、異性・同性を問わず全16名のキャラクターと恋愛関係を築けるようになっており、プレイヤーの感情や価値観を無理に縛ることなく、自然なかたちで人間関係を深めていける設計になっています。
登場する恋愛対象のキャラクターたちも個性豊かで、たとえば、明るく元気ないろは(CV:和氣あず未)、冷静かつ頼れるムラサメ(CV:古川慎)、柔らかな雰囲気を持つマウロ(CV:梶裕貴)、そしてミステリアスな印象を与えるうららか(CV:上田麗奈)など、それぞれが異なる背景や性格を持っているため、誰とどのような関係を築くかによって、物語の空気感までもが少しずつ変化していくのを実感できます。

恋人になるためには、対象キャラクターとの“絆レベル”を一定以上まで高め、さらに専用の“絆クエスト”をクリアする必要があります。この一連の過程が非常に丁寧に描かれており、単なる数値上げでは終わらない、関係性の積み重ねを感じられる流れになっているのが印象的です。会話を重ね、プレゼントを贈り、何気ない日常を共有する中で少しずつ距離が近づいていく……その時間の積み重ねこそが、今作の恋愛パートをより濃密なものへと押し上げています。
そして結婚後には、さらに一歩進んだ展開が待っています。ふたりの生活が始まったあと、一定の日数が経過すると、子どもを授かることも可能になっており、家族としての生活が描かれていくようになります。このあたりの描写も非常に丁寧で、結婚というイベントを単なるゴールとするのではなく、その先にある「暮らし」を体験させてくれる設計が印象的です。
加えて今作では、「世界渡ノ法(せかいわたりのほう)」という独自のシステムが導入されており、現在の結婚相手や子どもとの関係性を保存したまま、“別の世界”へと渡ることができる仕組みも用意されています。この“別の世界”というのは、平行世界──いわば「選ばなかった選択肢の先」にあるもうひとつの人生のようなもので、プレイヤーは新たなパートナー候補と出会い直し、改めて関係を築いていくことが可能になります。
この世界渡ノ法は、結婚から10日が経過した後に、縁結び神社の御神木のそばにある“光”を調べることで使用できるようになります。一度築いた関係を壊すことなく、新たな選択肢へと踏み出せるこのシステムは、物語や恋愛を深く楽しみたいプレイヤーにとって大きな魅力になっています。
エディションの違いと特典内容
『龍の国 ルーンファクトリー』には、いくつかの異なるパッケージやダウンロード形式のエディションが用意されており、それぞれに異なる特典が付属しています。どのエディションを選ぶかによって、ゲームの入り口となる体験が少しずつ変わってくるので、購入前に自分に合ったスタイルを把握しておくことは、満足度の高いプレイにつながるはずです。
まず基本となるのは「通常版」です。これはパッケージ版とダウンロード版の2種類が用意されており、純粋にゲーム本編のみを楽しみたいというプレイヤーにとっては、この通常版がもっともシンプルで手に取りやすい選択肢になります。
そのうえで、デジタルコンテンツが充実した上位版として登場しているのが「デジタルデラックスエディション」と「プレミアムデジタルデラックスエディション」です。前者には、ゲーム本編に加えて限定衣装や追加のコンテンツが含まれており、ストーリーや生活パートをより彩り豊かに演出してくれる仕組みが整っています。そして、さらに内容を充実させたプレミアム版には、デジタルアートブックやサウンドトラックといった“作品世界にどっぷりと浸れる”コンテンツが詰め込まれていて、シリーズの世界観そのものをより深く味わいたいという層には非常に魅力的な構成になっています。
また、ファンなら見逃せないのが「マーベラスショップ限定版」です。このエディションには、物理的な特典として描き下ろしのB2タペストリー、アクリルパネル、さらには「ふわもこ♪モコロンぬいぐるみポシェット」といった、ゲームの世界観をそのまま日常に持ち帰れるようなアイテムが付属しています。とくにモコロンのぬいぐるみポシェットは、見た目の可愛らしさだけでなく、ファンの間でグッズとしての実用性も話題になっていて、コレクション性の高さという点でも一歩抜きん出た存在となっています。

エディションごとの価格にも差がありますが、それぞれに用意されたコンテンツや付属品の内容を見ると、しっかりとその価値が反映されていると感じられます。ゲーム体験を本編だけにとどめず、キャラクターたちや物語、ビジュアルの世界観まで含めてじっくり楽しみたいという方にとっては、デラックス系や限定版は検討する価値のある選択肢になっているといえそうです。